2011年05月16日

「意見と要望」のとりまとめ、ほぼ終了

 学長から届いた「公開質問状への回答書」に対して、私たちの仲間で「意見と要望」をとりまとめて学長に再度送ることになった。遅まきながら、ようやくその意見集約をほぼ終了して、明日の昼ころに先方に送る予定になっている。最終文書は、送付後にここにアップロードする予定である。


 「意見と要望」はいろいろな人の意見を容れて「紳士的」になっているので、用済みになって、日の目を見そうにない私のコメント(前回、「躊躇」云々と書いたもの)についても、ここに載せておこうと思う。ちょうど公開質問状が届いた当日(1週間前)のコメントなので、土壌の処理方法など、現在からみれば状況が変わったものもある。しかし、当日の臨場感もある。ともあれ、参考までに。


*****ここから*****


 昨日お伝えしたとおり、学長から、私たちの提出した公開質問状への回答が届いた。それについて、思いつくままにコメントしてみたい。長い教授会の後なので、持久力が心配ではある。

 まずは、回答が届いたことを喜びたい。正直にいえば、5割とはいわないまでも、回答が来ない可能性も織り込んでいた。それほど、全学執行部の震災後の動きは、私たちにとって不審を抱かせるに足るものであった。しかも、外的条件からすれば、授業開始予定日直前の繁忙期だった上に、回答期限を区切った公開質問状だった。だから、回答の日を半信半疑で待っていたのは事実である。
 しかし、実際には期日中に回答が届いた。これで、議論のスタート地点は築かれたと思う。学長の判断と行動に敬意を表したい。

 しかし…である。文書を開いて驚いた。
http://311fukushima.up.seesaa.net/image/E585ACE9968BE8B3AAE5958FE78AB6E59B9EE7AD94.pdf

 まず、目に入ってきたのは「入戸野修 福島大学長殿」という宛名である。最初は冗談かと思ったが、どこかで見た文章が続いていた。それは、私が先方に送った文書そのものではないか。そこでファイル名を確認したのだが、確かに「公開質問状回答」とある。文章を追っていくと、2頁目以下に赤字で回答が書かれていた(苦笑)。40年以上生きてきたが、このような回答文は見たことがない。事務的であれと言うつもりは毛頭ないし、忙しいのもわかるが、わざわざ「公開」と書いているのだから、多少は体裁を整えていただかないと組織の質を問われるのではないか。そんな余計な心配をしてしまう。
 しかし、形式を問うのはそれくらいにしよう。大切なのは中身なのだから。

 …とは言ったものの、結論からいうと、「回答」も私たちの質問にあまり正面から答えてはいなかった。この点について、順を追って検討したい。

 まず、「1」の点からである。私たちからの質問は、要約すれば、授業再開という重要事項に対して、学生・教員・職員という大学構成員三者の意見をどのように反映させようとしたのか、あるいは、今後していくのか、というものであった。「これまで」のことについては、「非常時であったから、緊急措置として危機対策本部で決めた」という答えであった。
 議事録は公開するが、まだ整理が終わっていないので、疑義がある事項については問い合わせること、とのことである。私の関心としては、誰が、何を根拠に、授業再開を主張し、それがいかなる経緯で合意に至ったのかを知りたいので、どの部分を…と言われても、全体を通して眺めなければわからない、ということである。この点は、議事録の整理をまつほかない。事前に聞きたい気もするが、ほかの仕事の妨げになっては本末転倒である。
 「今後」については、審議・決定を平常に戻し、「従来の審議体制に戻したい」と書かれている。これは、三者自治による大学運営という常道に立ち返るということであり、歓迎したい。いずれにしても、教授会の議題にすらしなかったという点について、何の回答もなく、したがって何の反省もない点は、遺憾である。この点については2.で再度言及する。

 次に、「2」について検討してみよう。私たちの質問の趣旨は、「誤った予測に基づいた授業再開計画を、誤りが発覚した後に見直したのかどうか」ということであったが、回答は、これに対しても正面から答えていない。
 回答書によれば、授業再開を決める指標は4つあって、施設の安全性、ライフラインの復旧、交通機関の復旧、原発事故の推移、ということであった。しかし、モノサシだけ明示されても、判断の正否は確定しようがない。たとえば、「現時点で建物が崩れていない」ということと、「施設が安全である」ということはイコールではない。また、今もなお異常発熱している原子炉もあるから再開すべきでない、という結論も導かれうるからである。
 「数値の見込み違い」については、1/30にはなっていないが「放射線強度は減衰している」と書いている。行間を読めば、「たいした間違いではない」ということのようだ。そういう見通しだからこちらの懸念が尽きないのであるが、「このまま推移すれば…通常活動ができる範囲にある」という見解を繰り返している。まず、「なぜ、このまま推移すると思えるのか?」ということが問題なのだが、そういう「前提を疑う」という姿勢は持ち合わせていないらしい。
 この回答で重要な情報は、「授業再開の最終決定は4月12日」という部分である。この日程は、行政政策学類の教授会の前日であり、なぜ決定を1〜2日待てないのか理解に苦しむ。最初から、教授会の意向を反映させようという姿勢がなかったと判断されても仕方なかろう。

 「3」では、事故当時に明らかにされなかった「最新情報」をふまえて授業再開を延期するつもりがあるか、と聞いたのであるが、この点には回答がなかった。重要なのは、「20mSv/年が大学再開の基準」というのは誤解だから、メッセージを修正した、という部分である。具体的には「5月1日からの年間予測被ばく量については4.4mSv/年でありそれが開校の判断の一つとなりました」とある。なぜ放射線の低減した5月を起算日にしているのか、また4.4mSv/年という計算が妥当なのか。これらの点はここでは触れないが、少なくとも、20mSv/年ではなく、4.4mSv/年が大学の判断根拠であると示されたことは重要であろう。土壌の「除去」と明示した点も高く評価したい。文部科学省は、コストを縮減するためであろうが、土壌の「天地返し」という安易かつ安価な方法で事足りると指導しているふしがあるから、この点は強調されてよい。

 「4」は、なぜ多様な学説(放射線に対して楽観・標準・慎重)があるのに、楽観説だけに寄りかかるのか、という質問であったが、この点についても回答はなかった。複数の説を比較衡量したという説明も、反論もなかったことからすれば、比較しなかったのであろう。
 とはいえ、ここでは大学が現状をふまえて「自主的に判断」するという発言があった点は高く評価したい。私たちは、大学が自主的な判断を放棄したのではないかということを危惧していたからである。ただし、繰り返しにはなるが、判断の際に学生や教職員の意見も反映させるよう要望したい。

 「5」にもまた、「健康被害がないと判断される基準以下であれば…」という文言が踊っている。「そのような『基準』自体が、まだ科学的に解明されていないのではないのか」というのが質問状の趣旨であるが、その意を酌まず、相変わらず楽観説にだけ依拠する姿勢を崩していない。こういう点に無自覚だから、態度が改まらないのである。
 さらに、「授業再開のもたらす責任」を問うているにもかかわらず、「その前に放射性物質を拡散させた事業者、国の責任があると思います」という一般論で答えているのも不満が残る。とはいえ、文中には明確に「晩発性障害の発生に関して大学再開が影響しているとすれば、当然大学の責任が問われるものと考えます」と述べられており、この点は評価したい。しかし、大学再開と晩発性障害の因果関係を説明することは非常に難しいため、その際の挙証責任にも言及していたのだが、それについては回答がなかった。結果的に、「一般論としては晩発性障害の責任は大学にあるが、当該症例は原発事故による晩発性障害かどうかはわからない」という逃げ道を残している。この点は、具体策の提示(卒業後も健康診断を継続して実施するよう、国や東京電力に要請するなど)とともに改める必要があるように思う。

 「6」では、放射線量低減に向けた大学の努力について質問した。今後のスケジュールは具体的に挙がっているが、これまでしてきたことについては言及がない。やはり、大学として線量の低減を実施する取組が、これまでは弱かったということだろう。しかし、6月の段階で「『可能な限りの』汚染土壌の撤去工事を『検討』」という見通しで、学生の被曝量を本当に減らそうと考えているのか、心配である。
 また、基本的なスタンスは、大学内の清浄化であって、キャンパス外での本学の授業の実施は配慮されないようである。個人的には、来年度以降の受験生確保のためには、多少のコストを覚悟してでも、大学の講義を安全な場所に移して実施するようなスキームを早急に考えた方がよいように思う。通学を望まない学生への配慮として、他大学での聴講について、大学側が「希望大学との調整を図ります」と述べているのは、「各自で対応する」という、これまでの原則をはるかに前進させるものとして評価したい。

 以上、全般として、私たちの質問に答えていない点が多々あるのは遺憾である。また、つい最近まで、大学として、ほとんど学生や教職員の安全のための手立てをとらず、対応が後手に回っていたこともわかった。今後の問題としては「有志教員が各種委員会・教員会議等で積極的に提案されることを要望します」という意見のようである。であれば、なぜこれまで学内の意向を一切聞かずに授業再開を決定したのか。この点が問われる。これまでの大学運営のあり方に対する反省を公にし、全学的な協力体制の上に今後の対策を考えていくという道筋が求められる。


*****ここまで*****

最近のニュースから

文部科学省発表(文部科学省と米エネルギー省による線量測定マップ)
http://www.mext.go.jp/a_menu/saigaijohou/syousai/__icsFiles/afieldfile/2011/05/06/1304694_0506.pdf

ガンダーセン氏の考察(翻訳が少々不審ですが)
http://www.youtube.com/watch?v=kghLgF2NRFk

 最近、「今さら…」というニュースが立て続けに入ってくる。津波到来前に重要施設が損傷していたとか、翌朝には1号機で炉心溶融(メルトダウン)が起こっていたとか、福島県庁がSPEEDIのデータを早い段階で受け取っていたとか…。いずれも、原子力発電所の安全性や、住民の健康・安全に関わる重大問題のはずであるが、もはやこの手のニュースに慣れてしまった身からすると、驚きもしなくなっているということであろうか。

 原発の状況はそうとう深刻であると思う。汚染も、チェルノブイリ事故の際のものと見比べても、決して軽微なものではない(福島市辺りでも)。色をチェルノブイリ事故の際のものに近似させて表示させたHPを発見した。色を変えると、ずいぶんイメージが変わる。 
http://www.selectourfuture.org/f1/index2.html
posted by あるじ at 21:35| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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