2011年07月04日

緊急声明

 7月3日、FGFの仲間たちと、議論の末、県知事に対して「県民健康管理調査」に関する緊急声明を発表した。
kinkyu_seimei.pdf

 周知のように、この調査は福島県が全県民を対象に実施し、その内部被曝量を推定するものである。その目的は、「原発事故に係る県民の不安の解消、長期にわたる県民の健康管理による安全・安心の確保」だそうで、ご丁寧に「不要な不安を払拭」と繰り返している。
http://www.pref.fukushima.jp/imu/kenkoukanri/20110618_chousagaiyou.pdf

 多くの福島県民は、県が全県民を対象にした「健康調査」を実施すると聞いたとき、「県もやっと重い腰を上げて県民の健康管理のために動きはじめた」と思ったはずである。しかし、はたしてそうだろうか。

 福島「県民健康管理調査」検討委員会の座長は、かの福島県放射線リスク管理アドバイザー、山下俊一氏である。この人物が3月以来県民に何を語ってきたかは、今さら繰り返す必要もないであろうが、一口で要約すれば、彼は、県民に避難の必要はないと言い、「安全だ」を連呼してきた人物である。

 県民の避難を思いとどまらせ、被曝に対する予防をおろそかにしてきた人物が、今度は健康管理調査の実施責任者になるというわけである。「体制の公正さが調査結果の公正さを担保する」という観点からすれば、非常に問題のある人選である。原子力推進組織が除染をし、県民に余計な被曝をさせた人物が健康調査をする…。非常時なら何でも許されるのか?少々驚きを禁じえない。

 現状に照らせば、すでに、福島市在住の子ども10人の調査で、10人全員からセシウム134,137が検出されている。おそらく、これも「ただちには健康に被害のないレベル」として処理されるのであろうが。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110630/t10013893131000.html

 このニュースで、「この量で健康被害があったという報告は、これまでにない。過度に心配せず、ふだんどおりの生活をしてほしい」と語っているのは放射線影響研究所元所長の長瀧重信元理事長である。放射線影響研究所がいかなる組織であるか、彼と山下俊一氏はいかなる関係か、もふまえてこのコメントを聞けば、その狙いとするところがよく理解できるであろう。

 いずれにしても、放射性物質は時間とともに体内から排泄されていく。だから、検査が遅くなればなるほど検出される数値は低下する。問題は、数値が低下し、検出されなくなっても、それが体に影響を及ぼさなかったとはいえないことである。放射線の影響で、傷つき修復されなかったDNAは、その後、細胞を癌化させる恐れがある。しかし、検査時点で放射性物質が検出されなかった場合には、それが放射線の影響であることを証明できない。県の予定では、問診票の配布が8月末、回収後に被曝線量の高そうな人をピックアップしてホールボディカウンター(WBC)で検査とのことである。いったい、それはいつの話か。多くの被験者の数値が「誤差の範囲」になってしまうのではないか。住民の健康への影響をより正確に見極めようという意図があるなら、可能な人から、即座にWBC検査を受け、その費用は県が(当面は)支払うという仕組みにすればよい。時間稼ぎをしている場合ではない。

 それから、今回の調査が「全県民を対象として…」と語っているのも引っかかる。言外には、県が丸抱えで、独占的に調査を実施するということであろう。これは、「県民の健康に関しては、県が一番多くのデータをもっている(=最も権威があり、信頼に足る調査である)」という事態を招く。にもかかわらず、原発事故後の県庁の対応(SPEEDIのデータを公表せず、避難を勧告せず、健康調査をせず…という、一連の不作為)に照らしても、今回の健康調査の使われ方には一抹の不安が残る。原爆やチェルノブイリの際の健康調査の、二の舞にならなければよいが、と。

 現在の体制で、住民の健康を第一にした調査が行われるとは考えにくい(「健康調査」という名の…)。しかも、県民の健康不安を忖度すれば、「調査するな」とはもちろんいえない。こういうダブル・バインドの状況で、緊急声明に名前を連ねたのである。

 いうまでもないが、ここに書いたのは私見であり、ほかのメンバーが合意している内容ではないし、「緊急声明」の公式的解釈でもない。
posted by あるじ at 23:31| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

除染活動をめぐって

 一ヶ月ぶりのブログ更新である。書くことがなかったわけではない。書く時間がなかったわけでもない。何を書いてよいかわからなかったのである。

 エントロピー学会の山田国廣さん、細川弘明さんたちと、福島のみなさんと一緒に市内の除染活動を実施していることはすでに書いた。来週末もその活動と合流予定である。この活動の影響でかどうかは定かでないが、6月25日から、ようやく県や福島市も重い腰を上げて除染活動に乗り出した。市内3小学校(福島第一、北沢又、金谷川)連日50人体制で動いてる様子が報じられているが、実施協力は文部科学省、東北大学、京都大学、福島大学、原子力研究開発機構等々で、事実上ここが実働部隊であろう。
http://www.jaea.go.jp/jishin/kiji/kiji110624.html

 悩ましいのは、原発を推進してきた組織が除染の中心に座るということである。「原発の専門家は除染の専門家でもあるわけだから、この際、協力していただくのは当然」という意見もあろう。しかし、心情的には釈然としない。誰の生き残りのため作業か、という疑問である。むろん、住民のためなら言うことはないが。

 彼らが実施している「高圧洗浄機」の利用もどうなのか。私たちの除染活動が基本にしているのは、「そこにある放射性物質を、移動させず、そのまま取る」ということである。水で流しても、放射性物質は消えてなくなるわけではない。側溝や下水道、あるいは隣家に流れていくだけである。「その場」からなくなっても、ほかの場所に追いやったに過ぎない。こういう活動は、短期的に小学校の線量は減っても、周辺あるいは近隣の小川、下水管に放射線を拡散させていることであり、長い目で見れば市内全体を視野に入れた除染活動をする際には、阻害要因になりかねない。たとえば、北沢又小学校の裏にはよどんだ水路があり、そこに洗浄水が流れ込んで滞留している。これが新たなホットスポットになる。

 「汚染の拡散や押し付け合い」は避ける必要がある。

 福島大学の高橋副学長は、学内での除染実験のときにしきりにそのこと(水を使った除染の戒め)を強調していたが、今回は何も言わないのであろうか?そういえば、福島大学が学内の除染もしないで、市内の除染に協力しているのも不審である。大学は、6月29日の朝にやっと「U字溝」の除染日程を「発表」したばかりで、グランドの除染はお金がないからめどが立たないとか…。除染して請求しない限り、待っていては予算などつく見込みはほぼないと思うのだが。その一方で、日本原子力研究開発機構との「連携」が教授会で報告された。原子力の推進組織と福島大学が「連携」するなど、思いもよらないことだが、こういう重要な案件も「報告事項」である。「大学間連携と同じ」という認識なのかもしれないが、そういう認識自体が…。書いていて辛くなる。

 原子力推進組織が自ら除染に…というのは、どこかで見た景色である。

 そのことは、次回書こうと思う。




今回紹介する資料
http://jp.wsj.com/Japan/node_258611
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00202518.html
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1132
http://1am.sakura.ne.jp/Nuclear/110701TokyoPress.pdf
posted by あるじ at 09:17| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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